幻覚……じゃないですよねこの舞台

2.5を中心に舞台をみた感想などをつぶやいています。

20230722 18:00- クロードと一緒に 2回目

@京都文化博物館 週の半ばの猛暑と比べると静かな暑さな晴天の日

横浜初日から2回目の観劇。
「2回目」っていうのが、こんなにも物語の印象を変える舞台に巡り合うことはまれだよなあとしみじみと思います。
とても満足度の高い観劇体験でした。

 

 


【物語の印象】

初回にハラハラし、イライラし、困惑の坩堝に叩き込まれた「真実はどこにあるのか」という、一種のミステリー的なおもしろさ。
その『謎解き』から少しだけ解放された2回目は、『カメラを止めるな』の2回目のような、進撃でいうマーレ編のような、
「立場を変えると見えるものが異なる」という質の楽しさがありました。
初日には刑事さん寄りの『早く本当のことを論理立てて教えてくれ!』という気持ちしかないんですが、最初から『彼(イーヴ)』の行動原理「クロードの尊厳を守る」「初めての愛と喪失体験の混乱」的なものと解釈しているのですが、それがわかるとイヴのことばや表情には「本質」があらわれており、なんなら最初から本当のことしかいっていないと感じました。
刑事の質問に「わかってないなあ!」とさえおもうので、彼にとって本質からズレ続けているのは刑事なんだよなあってのが体感できてよかったです。

また、『判事』のストーリーにおける重要性をより強く感じられました。
判事はおそらくゲイではあるものの、妻や子がおり「社会に隠して生きてきた」側の人間で、それがバレたときの傷は想像にかたくないわけですよね
それはクロードが歩もうとしていた未来でもあるわけで、しかも『クロードがイーヴへの愛に気づいてしまった』瞬間に唾棄しなくてはいけない未来、そしてその困難性!『ありのまま生きれない』という時代の、クロードの絶望を感じました。


【演技の感想】


主演の松田凌さんの顔つきが初日と異なり、同じ人が演じているとは思えなくてびっくりしました。
初日はなんとなく「ポスターやあらすじで見るより強そうだな」と思っていたんですけど(?)、役が沁みてきたのか少年感が出ているように思いました。
表情や言葉も「イーヴ」が本当に生きているようで、存在感の輪郭が強かったです。
特に、「彼」の存在が脅かされそうになる時の怒り、苛立ち「守らなくてはならない」という『抗戦』感があったように思います。

また、2回目だったので彼への恋情もよりストレートに感じました。セクシャルな回想、いわゆる「パンケーキ」シーンでは指を口の中に入れ食み、クロードを実感してるような仕草をしていて!そこまでするのか!と覚悟顔になりました(最高でした)


【一番印象に残ったシーン】

松田さん、そして神尾さんの演技は今日は、「怒り」「苛立ち」が温度の高い炎のようにたちこめていました。
わたしが泣いてしまったのは、イーヴが刑事に内面を語り始める直前の、一瞬。
疲れ切って顔を覆う刑事さんにライトがあてられ、どろりとした疲労と戸惑いが影絵として劇場の壁に揺れる。
下手に座る私は、刑事さんに肩の向こうで、イーヴが言葉を紡ごうとして唇が空を描き、そして止めるのが見えました。なんども。何度も。

これから、誰にも教えたくなかったであろうことを言う言葉。彼への気持ちや喪失感を表そうとしても適切な言葉でラベリングできない戸惑い。刑事が見てない背後でみせる子供のような表情。『判事の部屋にたてこもる』という動機とその決壊が込められた表情でボロボロ泣いてしまいました。



【会場の感想】

普段は劇場ではないところに、この期間だけ、この物語のために作られたセット。
レンガ作りの壁、素敵な吊り下げ型の照明古い建物の匂い、外の風のざわめき、綺麗すぎない声の響き方、舞台の時代背景を思わせる空気。【臨場感】私たちが彼らのいる現場に立ち会ってるということを五感で感じ没入しました。
劇場ではなく、歴史ある博物館で演劇を実施する。文字で書くと実感が湧かないのですが、素人が察するにはあまりあるその労力と、それをら成し遂げようとするプロデューサーの創造力に敬意
事前にレポでみたので覚悟してましたが、声の反響は少々ストレスで
荒々しさがエッセンスになるプラスの効果もありつつも、後ろ向きになるとグワクグワンとなるので、座る位置によってはほとんど聞き取れないかたもいたかもしれません。もし次回あれば改善工夫ポイントでしょう。

しかし、空調は程よく効いていて快適でしたし、劇場ではない現場で最大限にスムーズに安全に努めようという真心が感じられました。スタッフさんの丁寧なオペレーションに感謝です。